「霧の音」

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〔1956年/日本〕


昭和22年。
中秋の名月の頃。
信州の山小屋に、
植物学者の大沼一彦(上原謙)と、
助手のつる子(小暮実千代)が滞在していた。
大沼の妻は議員に立候補するような女傑で、
夫婦仲は冷めきっており、
大沼とつる子は、愛し合っていた。
しかし、つる子は大沼の家庭の事を考え、
置手紙を残して、姿を消す。


3年後の中秋の名月の頃。
同じ山小屋に、大沼が14歳の娘・悠子を背負ってやってきた。
悠子が登山の途中、具合が悪くなり、
大沼は困っていた。
実は、山小屋の中に、
芸者になったつる子がいたのだが、
悠子の病気に気を取られていた大沼は、
つる子の存在には気が付かぬままだった。


さらに3年後の中秋の名月の頃。
高校生になった悠子を連れて、
また、大沼が山小屋にやってきた。
大沼は、近所に住む獣医から新婚の妻を紹介され固まった。
それはつる子だったのだ・・・。





同じ山小屋を舞台に、
3年ごとに関わり合う男女を描いた物語。


このような映画、
誰も観ないと思うので、
ネタバレしてしまうけど、
大沼が4度目に山小屋に行くと、
つる子は既に死んでいて、
大沼はショックで男泣きする。


実は、2度目に山小屋に行った時、
大沼は妻は死んでおり、
2人が再会していたなら、
もう、結婚への障害はなくなっていたのだけれど、
運命の神様は、
そうはさせてくれなかった。


どんな事でもそうだけど、
物事、上手くいく時は、
とんとん拍子で上手くいくし、
ケチが付く時は、とことんケチが付く。
それが縁というものなのだろう。


しっかし、この時代、
大沼とつる子が愛し合っているとはいえ、
2人の関係はプラトニックだという。


イマドキだったら、
中高生からでさえ、
「そんなの付き合ってるとは言えないじゃーん」と
言われてしまいそうである(笑)。


もちろん、プラトニックだからこそ、
いつまでも思いが残るという事もあろうし、
ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの名画、
「恋におちて」のテーマでもある、
「体の関係より、心の結びつきの方が、妻としては辛い」
という事もあろうが。


評価 ★★★☆☆

この記事へのコメント

  • ムサシママ

    相手の家庭の事を考え去ると言う最初の設定が昭和ですね
    そこから始まる行き違いで悲しい結果になる
    男と女の関係はちょっとしたことで幸福にも不幸にもなるんですね
    「体の関係より、心の結びつきの方が、妻としては辛い」・・・
    どっちも同じ位辛いと思います
    2024年10月23日 13:07
  • JUNKO

    小暮実千代さん、個性的な女優さんでしたね。
    2024年10月23日 13:21
  • angie17

    デ・ニーロとメリルストリープの映画は、随分前に観ました。
    観た事も内容もすっかり忘れていましたが、
    青山さんの記事を読んで、急いでWikipediaで再確認(笑)
    確かに、プラトニックの方が妻は辛いでしょうね。
    2024年10月23日 17:09
  • いろは

    こんばんは^^
    懐かしい俳優さんの名前がずらりと...^^
    上原謙さんって、本当に美男子でしたね。
    昔の映画はこういうお話が結構ありましたね。
    「君の名は」はすれ違いばかり、それが又良かったのでしょうね。
    2024年10月23日 17:52
  • tommy88

    妻との恋に落ちています。
    老いらくの恋、おいらの恋。
    心の結びつきの方が、妻としては嬉しい、と言わせたい。
    相手の脳内は分からないから、何となく一方通行。
    それでも、妄想は繰り返し重ね、よく話し合ってズレを修正。
    サインを、合図と捉え、深読みをする。
    でも、まだまだ分かり合えていない所が奇妙の妙。
    だからやっぱりまだまだ、恋は続くよ何処までも。
    あとどれだけ思いのたけを告げ続けられるのか。
    月末からは長女の一時帰国、その期間は恋も休憩。
    来月末の見送りの後に再開。
    ペットも孫もいないから、構うのは自分自身しかいないし。
    でも、ドラマを見てお喋りをするのが楽しいのでした。
    2024年10月23日 19:37
  • かずい

    映画「霧の音」の感想、興味深く読みました。同じ山小屋を舞台にした3年ごとの再会という設定が、時間の重みを感じさせますね。すれ違いが続く運命の皮肉が心に残ります。プラトニックな関係ゆえに深まる絆の描写が、現代との対比でより感慨深いです。
    2024年10月23日 19:41
  • 向日葵

    なんとも切ないお話です。
    そしてこういうお話やすれ違いがお約束でもあったのでしょう。
    今の世だったら公開するのも躊躇するのかもー。
    プラトニックの方が辛い。
    これもわかる気がしちゃうから。。
    2024年10月24日 02:44
  • Rinko

    これも縁・・・
    そう受け止めるしかないストーリーですね( ;∀;)
    それでもやっぱり切ないな・・・。
    2024年10月24日 07:36
  • ミケシマ

    なんとも切ないお話ですね。
    2人とも真面目だな。むかしの人は皆こんな感じだったのだろうか…
    「体の関係より、心の結びつきの方が、妻としては辛い」
    これは本当にそう思いますね。
    心の結びつきを求めるのは、男性より女性の方が強い気がする。
    …そんなこともないのかな。わからないけど(;^ω^)
    ところで、全然関係ない話なのですが、最近「ミワさんなりすます」という漫画を読んでいます(知ってますか?)
    ものすごく映画好きな女性が主人公で、実花さんとはキャラが違うんだけど、なんとなく実花さんを連想しながら読んでます^^
    もし読んでなくて、読む機会があれば、ぜひ~
    2024年10月26日 11:42