「94歳のゲイ」

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〔2024年/日本〕


大阪市西成で暮らす、
94歳の長谷忠さんは、
自分がゲイであることを隠して生きてきた。


長谷さんが若い頃、
同性愛は、
「異常性愛」「変態性欲」と言われ、
「それは病気であり、治療すれば治るもの」だと
言われていた。


そんな世の中で、
自分がゲイだなどと言えるわけもなく、
今まで好きになった人に、
恋心を打ち明けたこともなく、
一度の性体験もないという。


長谷さんは、そんな気持ちを、
詩や小説に託し、
1963年には、現代詩の新人賞として最も権威ある
「現代詩手帖賞」を受賞した。
きっと、長谷さんの秘めた熱い思いが、
行間から溢れ出ていたのだろうと想像する。
94歳の今でも、
思っている事を文章にし、
文字もとても綺麗で、
知性溢れるかたなのだというのが分かる。


長谷さんは89歳の時、西成に移り住んだ。
これからはもう、自分をさらけ出して生きていこうと、
決めたのだそうだ。


そんな長谷さんに、
素晴らしい理解者が現れる。
それは、ゲイを公言している、
ケアマネージャーの梅田さん。
初めてできた、ゲイの友達。
50代の梅田さんとでは、
親子ほども年が離れているけれど、
2人のやり取りは実に微笑ましく、
観ているこちらは、
自然に顔が笑ってしまう。


しかし、そんな楽しい日々も、
長くは続かなかった。
ある日、梅田さんは路上で倒れ、
そのまま帰らぬ人となってしまったのだ・・・。


あぁ・・・何という事・・・。
天涯孤独の長谷さんにとって、
梅田さんの存在は、
それはもう、大きかったでしょうに、
また、出会う前の状態に戻ってしまうなんて、
あまりに辛すぎる・・・。


しかし、失意の長谷さんに、
また新しい出会いがある。


長谷さんの存在を知った、
東京都在住の日米のハーフで、
障害者支援の仕事をしているボーン・クロイドさんが
訪ねてきてくれたのだ。


意気投合した2人は、
銭湯に行き、
背中を流し合うのだが、
長谷さんは言った。
「人と肌を触れ合うのは初めて。
 なんて気持ちがいいんだろう」と。


とても嬉しい気持ちと、
切ない気持ちで胸がいっぱいになる。
94歳の長谷さんが、
「生まれて初めての事」を経験し、
その様子を見る事ができたのは、
とても幸せな気持ちになれたけれど、
そんな事さえ叶わずに生きてきた94年間の人生は、
どれほど孤独だっただろうと。


大阪と東京で、
離れてはいるけれど、
その後も2人は、お手紙のやり取りをして、
交流を深めているようです。


「もし、今生まれてきたら、何がしたいですか?」との問いに、
長谷さんは、
「誰かと暮らしてみたい」と
答えておられました。


長谷さんの夢が叶うといいのに。





同性愛者だろうが、
異性愛者だろうが、
両者が何も考えずに、当たり前に共存する社会、
それが理想なのではないかと、
私は思います。


もちろん、
なりすましなどによる犯罪は絶対に許されないし、
それを防ぐために、
お手洗い、更衣室、銭湯や温泉などの場所は、
外性器によって分ける事が、
大前提ではありますが。


評価 ★★★☆☆

この記事へのコメント

  • ミケシマ

    同性愛に対する偏見、今でも根強いと感じるのに、長谷さんが若い頃なんてもっとでしたでしょうね。
    本当の自分を隠して、孤独に苛まれながら生きる辛さは想像もできません。。
    自分を理解してくれる人がいること、それは大きな生きる力になります。
    他の誰も理解してくれなくても、唯一人でもわかってくれる人がいれば幸せです。
    でも、マイノリティが弱い世の中じゃなくて、誰もが同じ人間というのが当たり前の世の中になってほしい。私も心からそう思います。
    2024年07月22日 13:46
  • ムサシママ

    聞きかじりですが・・・
    動物の世界にも雌雄がはっきりしない集団があるらしいです
    その方が繁殖力が高くて子孫を残すらしいです
    人間が決めたガチガチの世界にはそろそろおさらばしたいです
    2024年07月22日 15:29
  • kiyotan

    少数派と呼ばれる人たちが表に出て来れない
    理解されないことが大きな原因
    堂々と声を上げて生きてほしい
    幸せを掴んで欲しいのです。
    2024年07月22日 20:45
  • よしあき・ギャラリー

    94歳、苦難の歴史を感じます。
    今ようやく、光が当たり始めて得るわずかな幸せに、救われる思いがします。
    2024年07月23日 06:01
  • トモミ

    本当に重い命題ですね!誰もが普通に自分の幸せを求められる世の中が来ることを切に願います!!
    2024年07月23日 06:41
  • Rinko

    長谷さんの事を、何かの番組で見た覚えがあります。
    映画になっているのですね。
    どんな人も、人として温もりを感じながら生きていける世の中であって欲しいですね。
    2024年07月23日 07:52
  • 拳客

    うちの会社でも、カミングアウトして堂々と仕事をされている方がいます。
    話せば普通だし同じ人間ですからね・・・ただ色々な意味で住みわけの仕方を考えないと駄目ですよね。
    2024年07月23日 08:32
  • starwars2015

    今でこそ社会的にも理解が進んでいますが、それまでは
    たいへんな暮らしだったんでしょうね。
    2024年07月23日 09:18
  • sana

    今でも「変態」「治療すれば治る」と思っている人、中にはいるでしょうね。深く考えずに、からかう人も。
    世の中全体がそういう空気だった頃には、到底カミングアウトも出来ないし、相手を探すのも難しい。
    長く生きている間に、人と触れ合うこともなかったなんて。
    出会いがあって良かったと思いますが。それも突然の別れだなんて。
    でも、また理解し合える人ができて、よかったです。

    公共のトイレのことなどは、また別な問題ですね。
    なりすましってのは、ひどい。まったくもう。あきれてものが言えません^^;
    2024年07月23日 17:07
  • mitu

    仕事仲間にゲイの人がいて仲良くしていました
    同じ7月生まれで気が合いました^^
    2024年07月24日 15:03
  • 青山実花

    ミケシマさん
    コメントありがとうございます。

    理解が深まってきたとはいえ、
    まだまだ、偏見がありますものね。
    94歳のかたの孤独を想像すると、
    胸が詰まりますね。

    そう、分かってくれる人が、
    一人いれば気持ちも軽くなるのですよね。

    少数の側が、差別もなく、
    かといって、特別扱いでもなく、
    誰もが同じという感覚の世の中ならいいですよね。
    2024年07月24日 20:28
  • 青山実花

    ムサシママさん
    コメントありがとうございます。

    雌雄がハッキリしない生き物、
    雌雄が生きている間に変化する生き物、
    そして、鳥のように同性愛が多い生き物、
    など、実際の生き物は多種多様ですよね。
    人間だって、同じですね。
    2024年07月24日 20:29
  • 青山実花

    kiyotanさん
    コメントありがとうございます。

    少数派がそれを隠すのでなく、
    当たり前に存在する社会になるといいですね。
    「みんな違って、みんないい」
    みんなが幸せになれるといいです。
    2024年07月24日 20:29
  • 青山実花

    よしあき・ギャラリーさん
    コメントありがとうございます。

    ほぼ一世紀を生きてこられたという事ですものね。
    ナジャ・グランディーバさんが、
    長谷さんをゲイバーに連れて行ってあげたいと
    言っていました。
    本当に連れて行ってあげてほしいです。
    2024年07月24日 20:29
  • 青山実花

    トモミさん
    コメントありがとうございます。

    この世に生きている人全てが、
    差別される事なく、
    幸せになってほしいです。
    2024年07月24日 20:29
  • 青山実花

    Rinkoさん
    コメントありがとうございます。

    この映画、まずテレビの
    ドキュメンタリー番組があったようです。
    映像を通して、
    理解が深まっていくといいですね。
    2024年07月24日 20:30
  • 青山実花

    拳客さん
    コメントありがとうございます。

    カミングアウトしやすい、
    素晴らしい会社なのでしょうね^^

    衣服を着けない場だけは
    外性器で決めるしかないと私は思います。
    それは、ゲイのかたが悪いのではなく、
    悲しいかな、
    なりすまして、性犯罪をしようとする人間が
    いるからです。
    2024年07月24日 20:30
  • 青山実花

    starwars2015さん
    コメントありがとうございます。

    このような映画ができるという事だけでも、
    少しは世の中進歩したのでしょうね。

    昔は、そのような事は
    絶対タブーだったでしょうから。
    2024年07月24日 20:30
  • 青山実花

    sanaさん
    コメントありがとうございます。

    いますね、確かに。
    昔はそうでも、考え方のアップデートができない
    人なのでしょう。

    同性愛を公表できないのも悲しいですし、
    相手を探せないのも悲しいですね。
    おそらく、身近にもいたと思うんです。
    気付かなかっただけで。

    陰茎を付けた人が、
    女子トイレや女湯に入ってきたら、
    どれほどの恐怖か、
    それが分からない人間は、
    想像力が欠如していると思います。
    なりすましは、
    異性愛者も、同性愛者も、
    冒涜していると思います。
    2024年07月24日 20:31
  • 青山実花

    mituさん
    コメントありがとうございます。

    素敵なお仲間がいていいですね^^
    とっても楽しそうです^^
    2024年07月24日 20:31
  • お散歩爺

    爺は子供の頃から男女が結婚して子供が生まれる、そんな基本的な
    過ごし方しか知らないで育ったので、レズだのゲイだのと聞くように
    なって目撃したことや雑誌やテレビで知っても馴染めません。
    頭が固いのかな?、戸籍も裁判で判決も偏ってるので普通になるのは
    もう少し先かな?。
    2024年07月25日 11:58
  • 青山実花

    お散歩爺さん
    コメントありがとうございます。

    いえいえ、頭が固いのではなく、
    そのような情報がなかったので、
    馴染めないのではないかと言う気がします。
    おそらく、周囲にも、
    同性愛のかたはいたと思うのですが、
    言い出せなかったのでしょうね。

    裁判も今が過渡期なのでしょうね。
    もっときちんとした認識ができるようになれば
    いいなと思っています。
    2024年07月26日 19:59
  • tommy88

    治療すれば治る
    これは大嫌いな発想です。
    優生保護法って同じ発想だと思うのです。
    絶対多数の絶対幸福って、社会の時間に言ってました。
    高度経済期に少年期を過ごし、マジョリティーに憧れました。
    徒党を組む側に付き、常に寄らば大樹の陰。
    大阪では朝鮮人差別、部落差別が混在していました。
    家庭内で親たちが普通に、「あれ、ヨツやで」とか言っておりました。
    狂った価値観は伝承されていきます。
    大学で教員免許を取るために少年心理学、青年心理学をとります。
    そんな教科書を読まずとも、あのマグマの爆発はあるのですが。
    私がよその子と違うことで、かなり締め上げられておりました。
    親からすれば、治療すれば治る、という発想が基本にあります。
    人と違って当たり前、それが個性と認識できない。
    自分と違うものが受け入れられない。
    自分と違うものは自分と同じように、治療して変える。
    時には去勢し、堕胎させることまで当たり前のようにさせる。
    気持ち悪いの一言で、人が人を斬り捨て抹殺する。
    ボクは男性とキスしません。
    しかし、他の男性が男性とキスしても、私は関与しません。
    だから妻が大好きなボクを、放っておいてください。
    そういう基本が教育出来ていないのがニッポン。
    出来が悪いということで隠された私の大阪時代。
    この子はなかったことにしようと、本人の前で言うか。
    時代に取り込まれていた親たちは、可哀想だったと思うのです。
    人間の一生は短いのだから、正すことは急いでほしい。
    変わってると人には言われますが、私はこれでも至って普通です。
    3,350mの山小屋を出て、ステテコ姿で星空を眺める。
    それが何か? ダウンのジャケットも持参していますが暑いもん。
    そんな恰好で寒くないのって、オレの性感帯をご存知か、脳なんだ。
    あ、一時期、自分は同性愛かと思った頃があって、絶対恩師との時間。
    落ち着いた濃密な穏やかな時間を二人で共有していた。
    そして自分をバイスと区分けしても始まらず、このままで行くしかない。
    だから可能な限り意識して、人を差別しないと決めています。
    2024年07月27日 07:05
  • 裏・市長

    これは今の時代だからこそ、
    公開が許されたドキュメンタリーですね。

    時代が確実に変化しています。
    私もついていけないほどのスピードで。

    ここ2~3例の裁判結果を見てみますと、
    「性の多様化」が認められ、
    少し前ならば、外性器を手術で除去し、
    ホルモン療法を施術した者に対して、
    ようやく認められた性別変更が、
    自己申告「のみ」で認められるように
    なったのです。

    つまり、青山実花さんが今日から男を名乗り、
    男風呂や男便所、応援団の部室で着替えても
    なんの問題もない訳です。

    もちろん裏・市長さんが今日の気分で
    女になってもいいのです。
    男に戻りたい日は男でもいいのです。

    手術などで見た目を変える必要がないのです。

    現実問題として、女風呂に侵入し逮捕された
    者が「心は女性」と訴えているケースも起こって
    います。現実に、そのような場合、逮捕は
    されたけれど、微妙…と判断するのか、
    実名は伏せられるようになりました。

    犯罪者の逮捕後・・・というのは、あまり
    報道されませんが、ほとんどが判例に従い、
    不起訴、釈放になっているのでは…と、
    推測します。

    という事は…言ったモン勝ち?!
    触りたい放題?見たい放題?覗き放題?
    裏・市長さんにとってのパラダイス銀河が、
    ほんのそこまで来ているのではないですか?

    裁判所が認めているのですから、
    これはもう「権利」ですよ。「権利」

    青山実花さんも今日からは、
    性別を自由に操りましょう!

    昨日まで出来なかったことが今日、出来ます!

    とりあえず、我が家の男風呂に入りに来て下さい!
    その時は私も男に戻りますので、
    男同士、ひとっ風呂浴びて、洗いっこしましょう!

    翌日、私はまた女に戻ります。
    もう少し早く、この「権利」が獲得されていたなら、
    パリ五輪で宮田笙子に代わって、女子体操の
    エースとして、華々しく日本にメダルをもたらしたのに。
    2024年07月27日 15:43
  • 青山実花

    tommy88さん
    コメントありがとうございます。

    どんな体の状態でも、
    どんな心の状態でも、
    人は、自分が理解できないもの、
    不可解なものは、

    病院へ行け、
    治療すれば治る、と思いたいのでしょうね。

    しかし、治療して治るものと、
    治療云々とは、
    次元の違う問題もあります。

    人が人を差別する事なく、
    誰もが当たり前に存在できる社会になってほしいですね。
    2024年08月26日 17:59
  • 青山実花

    裏・市長さん
    コメントありがとうございます。

    心と体の性別が合わず、
    苦しんでいる人がいる。

    それなら手術をして、
    なりたい性別になればいい、
    と思いますが、
    中々そうはできない人もいる事を、
    最近知りました。

    分かりました。
    そういう人の事を認めましょう。
    心の性別を、
    戸籍上の性別としてもOKです。

    ただ、お願いです。
    その判決を利用して、
    心も体も男なのに、
    女になりすます人が、
    一部います。

    そういう人は、
    痴漢目的で、
    お手洗いや、風呂に、
    入ってこようとします。

    だから、お手洗い、風呂、更衣室などだけは、
    外性器で決めさせてください。

    こちらも譲歩しているのですから、
    そちらも譲歩してください。

    差別しようという気持ちは毛頭ありません。
    力の弱い女性を守るためです。

    悪いのは痴漢です。
    なりすましです。

    そんな奴らがいなければ、
    このような問題は起こらないのです。

    私は女なので、
    裏・市長さんちの
    風呂には入りたくありません。
    2024年08月26日 17:59