
〔1969年/日本〕
学生運動で荒れるある大学に、
「理事長に会いたい」と、1人の女がやって来た。
彼女・浅丘ルリ子は、
応対に出た理事長の娘婿・岡田英二に、
「理事長の息子から凌辱されたので、200万円払え」と言う。
事を荒立てたくない理事長は、
結局200万円を出し、岡田はそれを浅丘に届けた。
浅丘はホテルに岡田を誘い、
2人は一線を越えてしまう。
浅丘には他にチンピラの恋人・川津祐介がおり、
別れたがっている浅丘の為に、
岡田は50万の小切手を渡す。
しかし、しつこく居座る川津に暴力を振るわれた岡田は、
反撃した際、誤って川津を死なせてしまう。
岡田は自首し、
裁判まで保釈となる。
彼は妻を捨て、大学も辞め、浅丘と暮らし始める。
ところが浅丘は、
今度は岡田の妹の婚約者・伊藤孝雄を誘惑し始める・・・。
これはもう、浅丘ルリ子の怪演に尽きる。
私の文章力では、この映画の凄さが伝わらないのが、
もどかしい。
スクリーンの中で珍妙なダンスを踊り、
出会う男を次々誘惑する浅丘さんは、
私の知っている浅丘さんとは、まるで別人。
途中から、「私は今、浅丘ルリ子を見てるんだ」という事を忘れるくらい、
主人公になり切っていたし、
彼女のあまりの言動に、
劇場内は小さな笑いの連続。
たしかに彼女は寅さんのリリー役でも、
他のマドンナに比べたら蓮っ葉なキャラだったけれども、
それでも、人間性はとても真っ当だった。
これはリリーなんてもんじゃない。
この凄さは、増村保造監督の力ね。
私は監督で映画を語れるほど詳しくはないけれど、
それでも増村監督は演出は、別格に好き。
何かで読んだ話では、
とにかく演技を大きく、大げさにと願われるとか。
この映画も、そんな増村ワールド全開(笑)。
若尾文子さんとの相性抜群で、
沢山の映画を残され、
またそれが、全て傑作。
若尾さんの出演作でない作品も、
夢中になれる作品が多く、評価も高い。
もっと多くの方に観てほしい気持ちでいっぱい。
浅丘さんは、
全体の3割は下着姿じゃないかと思えるくらい、
ほぼ半裸の状態で頑張っておられた。
彼女の体重が軽い事は、
よく聞く話だけれど、
いやはや、本当に細い。
骨にそのまま薄い皮が張ってある感じで、
浅丘さんの骨格がそのまま分かるくらい。
理科室によく置いてある、あの感じ(笑)。
浅丘さん演じる主人公は、
とにかく淋しい女。
ヒステリックに男(特に岡田英二)を罵倒し、
でも男に捨てられそうになる、
なりふり構わずすがり、1人にしないでと泣き叫ぶ。
そして、女の敵でもある。
彼女は男女が幸せそうにしていると、
それを壊したいという思いでいっぱいになるようだ。
意識しての事か、無意識にそうなってしまうのかは
分からないけれど。
ラストは、「これしかないのかも」、というオチ。
評価 ★★★★☆
この記事へのコメント
さきしなのてるりん
青山実花
コメントありがとうございます。
寅さんの浅丘さんは、
他のマドンナさんたちより、
突出した存在ですね。
今でも大変にお美しく、
憧れますね♪