
〔2013年/アメリカ〕
1841年。ニューヨーク。
自由黒人のソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、
妻と2人の子供と暮らす、
恵まれた生活。
ところがある日、
2人の白人から音楽の仕事の依頼があり、
酒を大量に飲まされたソロモンは、
目が覚めると鎖で繋がれていた。
彼はそのまま南部に連れていかれ、
サトウキビ農場で働く奴隷にされてしまう。
どんなに自分の立場を叫んでも相手にされず、
諦めた方が身の為だと思い至るのに時間はかからなかった。
農場主のフォード(ベネディクト・カンバーバッチ)は、
ソロモンを気に入るが、
有能なだけに、他の白人の使用人から目の敵にされ、
酷い虐待を受ける。
その後ソロモンは、
フォードの借金のカタに、
次の雇い主・エップス(マイケル・ファスベンダー)の家に行く。
エップスは綿花農場を営んでおり、
奴隷一人一人の収穫量を、毎日量っては、
相手を苛める男だ。
さらに、まだ年若いパッツィー(ルピタ・ニョンゴ)を、
性の慰み者にしている。
そして、それを知っているエップスの妻は、
パッツィーへの激しい嫉妬を隠そうともしない・・・。
本年度のアカデミー賞受賞作。
観始めてすぐに、
物知らずの私にはよく分からない事が出てきて、
混乱する。
「自由黒人」って何なのだろう。
私は、170年前のアメリカの黒人は、
全員が奴隷だと思い込んでいたのだけれど、
そうでない人もいたという事が驚きで。
しかも証明書まであったらしい。
その自由黒人であるソロモンは、
普通に白人の店で買い物などを楽しんでいて、
生活にも余裕があるようだ。
自由黒人の定義とは、
白人から売買された過去がないという事?
では、彼はどうやってアメリカにやって来たのだろう。
何らかの方法で、海を渡ってきたのだろうか。
で、その彼が騙されて、
南部に奴隷として売られるわけだけれども、
南部といえば、奴隷のメッカ、
白人にしてみれば、
やりたい放題なわけで。
黒人は家畜と同じというのが、白人の言い分で、
売りに出される場面からして、
「健康ですよ、よく働きますよ」と、
牛を売るのと同じ感覚の口上で説明がなされる。
そこで引き離される母子の様子に涙が出た。
その後、ソロモンは、
12年間、白人の家で働くわけだけれども、
奴隷への暴力の場面は、
観ていて苦しくなる。
人ってどこまで残酷になれるんだろう。
動物にだって、あんな暴力振るえはしない。
もし黒人を、自分が金を出して買った商品だと言うなら、
それならそれでいいから、
もっと物を大切にすれば?と言いたくなる。
こんな内容だけど、
個人的に、エップスの妻の嫉妬には笑えた。
夫がご執心の、奴隷だけどの可愛い女の子・パッツィーに、
ライバル心を剥き出しにする白人女。
しかも、「実家に帰る」と言った妻に、
エップスは、「どうぞ」だと(笑)。
あんた、そんなにパッツィーが好きかよ、
と突っ込みたくなった場面。
その後、ソロモンの運命を変えるブラピ様が、
満を持してご登場(笑)。
彼は差別意識のない白人という設定。
めっちゃ美味しい役(笑)。
笑っちゃいけないけど、なんか笑っちゃう。
彼がスターすぎて、なんでここに出てくるの?と言いたくなる感じ。
他の俳優さんから、明らかに浮いている。
カラーが違う。
人気がありすぎるのも考え物だ。
どうせなら、そんな善人役じゃなくて、
奴隷を人間と思わないような冷酷な彼を見てみたかったな。
一つだけ。
ソロモンは帰る所があるだけ幸せだよね。
「夜が明けない」まま一生を終える奴隷が
大多数(というか、ほぼ全員)な事を考えれば。
評価 ★★★☆☆
この記事へのコメント
りんこう
おっしゃる通り「夜が明けない人」がいっぱいいたんですよね。
「それでも夜は明ける」って題はちょっと違うと思います。
「あきらめない。」というコピーも、なんか違んだよな。
青山実花
コメントありがとうございます。
洋画のタイトルは、
時に凝りすぎていて、
内容とニュアンスが違ってしまう事がありますね。
今の日本で、何か悩みや困り事があっても、
「明けない夜はない」と自分に言い聞かせて、
乗り越える事もできましょうが、
基本的人権さえ守られていない奴隷の皆さんには、
そんな慰めさえ通用しない。
なんだか甘いタイトルとコピーな気がしますね。
mitu
家族のもとに生還出来た後も、彼を騙しひどい目に合わせた人物たちは罰せられることもなく・・・そして今でも、黒人への差別は無くならない現実社会が悲しいですね。
リンカーン キング牧師 オバマ元大統領
正そうと努力する人が現れても
根深いところで固まっていて
なかなかほどけない
悲しいですね
同じ人間なのに
青山実花
コメントありがとうございます。
本当に世の中って、決して勧善懲悪ではなく、
悪い人でも、一生恵まれて生きていく人もいるし、
真面目に生きていても、不遇のまま終わる人も
いるのですよね。
今、まさにアメリカで起こっている問題は、
実は200年以上も前から起こっている、
大変に根の深い事なのですよね。
みんなが平等に・・・という願いは、
難しいのでしょうか。
考えてしまいますね。
青山実花